介護施設の夜間・休日の災害対応|最少人数で自力避難できない方を守る

介護施設の夜間の災害対応、日中の訓練は通用しない

「日中の避難訓練はできている。でも夜勤の2人で、あの人数を本当に守れるのか」。介護施設の施設長や夜勤を担う介護職の方から、この不安を何度も伺ってきました。この記事では、介護施設の夜間・休日の災害対応について、最少人数で自力避難できない方を守るための考え方と、今日決めておくべきことをお伝えします。

私は消防のレスキュー隊員として、夜間に火災や浸水が起きた施設に出動した経験があります。そこで見たのは、職員が必死に動いていても、人数と時間の壁は簡単には越えられないという現実でした。

なぜ夜間は「同じ訓練」では守れないのか

日中は職員が十数名いても、夜間は2〜3名という施設が一般的です。その人数で数十名の利用者を、しかも多くは車いすやベッド上の方を、階段を使って外へ出すことは物理的に困難です。訓練で「全員を屋外へ」という目標を掲げていると、夜間に同じことをしようとして、途中で力尽きてしまいます。

さらに夜間は、利用者が眠っていて状況を理解しにくい、暗くて足元が見えない、応援がすぐには来ない、という条件が重なります。だからこそ、夜間は日中とは別の作戦が必要なのです。

最少人数のための三つの原則

私が施設に提案しているのは、次の三つを軸に夜間の対応を組み立てることです。

  • 水平避難を基本にする:階段を使わず、同じ階の安全な区画(防火扉の向こう側など)へ移すことを第一選択にする
  • 優先順位を事前に決めておく:火元や浸水側に近い居室から、自力で動けない方を先に移す順番を、夜勤者の頭ではなく紙で決めておく
  • 応援が来るまでの時間を知っておく:消防、法人内の他施設、近隣の協力者がそれぞれ何分で到着するのかを把握する

特に水平避難は、火災でも風水害でも有効な考え方です。「外に出す」から「安全な区画に集める」に目標を変えるだけで、2人でも現実的に動けるようになります。

夜勤者が迷わないための準備

夜間に一番怖いのは、判断に時間を使ってしまうことです。「通報するのが先か、移動が先か」「施設長に電話してから動くのか」。こうした迷いを減らすために、夜勤者用の手順を一枚にまとめて、ナースコールの近くに置いておくことをお勧めします。

また、利用者ごとの避難に必要な人数と方法(担架が必要か、シーツで引きずれるか、声かけで歩けるか)を居室の入口に表示している施設もあります。こうした表示は、応援に駆けつけた人が初めての施設でも動けるようにする効果があります。

もう一つ、夜間の応援体制として、近隣住民や法人内の他施設と「呼べば来てくれる」関係を平時からつくっておくことも大切です。私の経験では、夜間の施設火災で最初に駆けつけて手を貸したのは、消防隊ではなく隣近所の方だったということが少なくありません。年に一度でも合同訓練に招くことで、いざというときに頼める顔ぶれが増えます。

明日からできる夜間・休日の災害対応

まず、夜勤者が一人で「今夜の当直で火災が起きたら、最初の5分で何をするか」を声に出して言えるかを確認してみてください。言えなければ、それが今の弱点です。次に、次回の訓練を「夜勤2名、夜間、停電」の設定で一度だけやってみる。うまくいかない部分が見えることが、夜間対応の見直しの出発点になります。

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