病院のアクションカードの作り方に悩む看護部長・防災担当の方へ
「災害マニュアルは立派なものがある。でも、あの分厚さでは、揺れた直後に誰も読まない」。看護部長や防災担当の方から、そんな悩みをよく伺います。この記事では、病院のアクションカードの作り方と、作った後に現場で本当に使われるための運用のコツをお伝えします。
私は消防の現場で、指揮命令が届かない中でも隊員が動けるのは、「自分の役割が短い言葉で頭に入っているから」だと学びました。アクションカードは、その考え方を病院に持ち込む道具です。
アクションカードとは何か、マニュアルと何が違うのか
アクションカードは、災害発生直後に「この役割の人は、この順番で、これをする」を一枚にまとめたものです。マニュアルが「全体像を理解するための文書」だとすれば、アクションカードは「今この瞬間に動くための紙」です。
大切なのは、読む人が判断に迷わないことです。「状況に応じて適切に対応する」という表現は、平時には正しく見えても、災害時には何の助けにもなりません。「病室を回り、患者の安全を確認する」「その結果をリーダーに口頭で報告する」というように、動詞で始まる具体的な行動に置き換えます。
作り方の手順
私が勧めている作り方は、次の流れです。
- 病棟ごとに、災害時の役割を書き出す(リーダー、患者確認、設備確認、記録・連絡など)
- 役割ごとに、最初の10分・30分・1時間でやることを、動詞で始まる短文にする
- 一枚に収まらなければ、内容を削る。10項目以内が目安
- 実際にその役割を担う夜勤の看護師に読んでもらい、「これで動けるか」を確認する
特に四つ目が重要です。作った人が分かりやすいと思っていても、初めて読む人には伝わらないことが多いからです。新人や応援で来た他部署の職員が読んでも動けるレベルを目指してください。
また、カードには「やらないこと」も書いておくと現場が楽になります。たとえば「地震直後の10分間は、家族からの電話対応より患者確認を優先する」「エレベーターは使わない」など、迷いやすい場面での判断をあらかじめ示しておくのです。災害時に人が消耗するのは、行動そのものより「これでいいのか」という迷いだと、私は現場で感じてきました。
運用で差が出る三つのポイント
一つ目は置き場所です。ナースステーションの引き出しの奥ではなく、災害時に最初に人が集まる場所に、誰でも取れる形で置きます。役割ごとに色分けし、首から下げられるようにしている病院もあります。
二つ目は訓練で使うことです。訓練のときだけ特別な手順で動くのではなく、アクションカードをそのまま使って動いてみる。すると「この項目は順番が逆だ」「この報告先が曖昧だ」という改善点が見えてきます。
三つ目は更新です。人事異動や病棟の再編、機器の入れ替えがあれば、カードの内容も変わります。年に一度、防災担当と各病棟で見直す日を決めておくと、形骸化を防げます。
明日からできること
まず、自分の病棟で「地震直後にリーダーがやること」を10項目以内で書き出してみてください。それがアクションカードの第一号です。完璧なものを目指すより、まず一枚作って訓練で試し、直していく。それが、現場で使われるアクションカードの作り方だと私は考えています。
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