病院・介護施設の防災研修の講師依頼で最初に考えること
「防災研修をやるように言われたが、誰に、何を頼めばいいのか分からない」。病院や介護施設の事務長、防災担当の方から、そんな相談を受けることがあります。この記事では、病院・介護施設の防災研修を講師に依頼する前に整理しておきたいことを、依頼を受ける側の立場からお伝えします。
私はこれまで、医療施設を含むさまざまな組織で研修を行ってきました。うまくいく研修とそうでない研修の差は、講師の話の上手さよりも、依頼前の整理にあると感じています。
「誰の」「どんな困りごと」に答える研修か
最初に整理してほしいのは、対象者です。看護師向けなのか、介護職向けなのか、事務や設備の担当も含むのか、管理職だけなのか。医療・介護の現場は職種ごとに災害時の役割が違うため、対象が曖昧だと、誰にとっても浅い内容になってしまいます。
次に、その対象者が今抱えている困りごとです。「夜勤の人数で避難できるか不安」「停電時の機器の対応が分からない」「訓練がマンネリ化している」。こうした具体的な悩みが一つでも言葉になっていると、講師は内容を絞り込めます。逆に「防災全般をお願いします」という依頼は、一番難しい依頼です。
施設の現実を先に共有する
研修を実のあるものにするために、依頼時に次のような情報を共有していただけると助かります。
- 参加できる時間帯と人数(交代勤務で全員は集まれない、など)
- 建物の構造と立地(階数、エレベーターの数、浸水想定区域かどうか)
- 利用者・患者の特性(自力で動けない方の割合、医療的ケアの有無)
- これまでの訓練の内容と、うまくいかなかったこと
特に「うまくいかなかったこと」は、恥ずかしいものではなく、研修の一番の材料です。私の経験では、施設の弱点を率直に共有していただいた研修ほど、受講者の反応が具体的になります。
研修後に「何が変わっていてほしいか」を決める
研修のゴールは「話を聞いて終わり」ではありません。研修の翌週に、現場で何が変わっていてほしいのかを一つ決めておくと、講師との打ち合わせも、研修後の評価も楽になります。「夜勤者が最初の5分の行動を言えるようになる」「病棟ごとにアクションカードの一枚目ができる」といった、小さくても目に見える変化がお勧めです。
また、講師のタイプも確認しておくとよいでしょう。知識を体系的に伝える方が向く場合と、現場経験をもとに判断の考え方を伝える方が向く場合があります。自施設の課題がどちらに近いかで、選び方は変わります。
研修の形式についても、講義だけにするか、演習や簡単な図上訓練を組み合わせるかを検討してください。医療・介護の現場は交代勤務のため、同じ内容を複数回に分けて行う方が参加率が上がることもあります。時間が短くても、「自分の病棟なら、自分の夜勤なら」と考える時間を組み込んだ研修の方が、受講者の記憶に残りやすいというのが私の実感です。
明日からできる依頼の準備
まず、「対象者」「一番の困りごと」「研修後に変えたいこと」の三つを、それぞれ一行で書いてみてください。この三行があれば、講師への相談は具体的になり、研修の質は大きく変わります。病院・介護施設の防災研修は、依頼の段階から始まっていると私は考えています。
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