電気工事業の経営者や現場の職長の方から、「地震のとき、通電中の現場でどう動けばいいのか」「復電のときに何が起きるのか」という相談をいただきます。停電と復電は、電気工事の現場にとって二度訪れる危険な瞬間です。この記事では、電気工事に携わる方が地震の前後で確認しておくべきことを、感電と火災の二つの観点から整理します。
地震のとき電気工事現場で起きること
工事現場に特有の危険は、一般の住宅とは少し違います。仮設分電盤の転倒、ケーブルの引きずりによる被覆の損傷、脚立や高所作業車の上での作業中の揺れ、そして停電と復電の切り替わりです。作業中の職人は身体が電気設備に近く、揺れで体勢を崩したときに通電部に触れる可能性があります。
見落とされがちなのが、停電を「安全になった」と受け取ってしまうことです。停電中でも、太陽光発電、蓄電池、非常用発電機、自家発設備からの逆送電があり得ます。停電イコール無電圧ではない、という前提を現場の全員が共有しておく必要があります。
停電中の「見えない通電」に注意する
地震直後に停電した場合、まず行うべきは検電です。ブレーカーが落ちているから、電力会社が止めているから、という推定で作業を続けることは避けたいところです。私の経験では、慌ただしい復旧作業のときほど、いつもの手順が省略されがちです。また、地震後は天井裏や壁の中でケーブルが引っ張られ、被覆が傷ついていることがあります。停電中に見た目で判断せず、絶縁抵抗の確認を含めて、いつも以上に丁寧に手順を踏むことが求められます。
復電火災を防ぐ通電前の確認
地震後の火災で問題になるのが、電気が戻った瞬間に起きる復電火災とされています。倒れた電気ストーブや損傷したコード、水に濡れた機器が、復電と同時に発熱・発火するものです。電気工事業の皆さんは、復電を待つ側ではなく、復電の安全を確認する側の立場になります。
通電前に確認したいのは、大きく三つです。一つ目は、損傷した配線や機器が回路から切り離されているか。二つ目は、水没や結露のあった箇所がないか。三つ目は、現場内に人がいる状態で通電しないか、です。工事現場では複数の業者が同時に入っていることが多く、電気の担当者が復電した瞬間に別の業者がケーブルに触れていた、という事態は起こり得ます。復電のタイミングは声に出して全員に知らせ、確認の返事を待ってから行う。この一手間が事故を防ぎます。
お客様への説明も役割の一つです。地震後に依頼を受けたら、ブレーカーを入れる前に室内の電気機器の状態を確認するよう伝える。感震ブレーカーの設置を勧める。こうした一言が、地域の復電火災を減らすことにつながります。
揺れの直後、高所・活線作業からの退避
揺れを感じた瞬間に何をするかは、事前に決めておかないと身体が動きません。脚立の上なら無理に降りようとせず、まず身体を固定する。高所作業車のバケットの中なら手すりをつかんで姿勢を低くする。活線作業中なら、工具を離し、通電部から身体を遠ざける。この順番を朝礼で一度は口に出しておくと、いざというときの反応が変わります。
揺れが収まった後は、余震を前提に動きます。作業を再開する前に職長が現場全体を見て回る時間を確保してください。復旧作業中の二次災害は少なくないと感じています。
明日からできる準備
明日の朝礼で確認できることを挙げます。
- 検電器・絶縁手袋・ヘッドライトが各班に揃っているか
- 揺れたときの退避動作(脚立・高所・活線それぞれ)を全員が言えるか
- 復電の合図と、通電前のチェック項目を誰が担当するか
安全大会では、電気工事に携わる方から「停電を安全だと思い込んでいた」という声をいただくことがあります。感電も火災も、知っていれば避けられるものが多いはずです。
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