「今年の安全大会、講師をどうしよう」。毎年この時期になると、企画担当者の方から同じ相談をいただきます。安全大会の講師の選び方で悩むのは、講演が「その場では良い話だった」で終わり、現場の行動につながらなかった経験があるからではないでしょうか。この記事では、私が講師として数多くの安全大会に立ってきた側から見た、心に残る防災講演にするための5つの条件をお伝えします。
安全大会の講師選びで多い失敗
よくあるのは、「有名だから」「去年と違う人なら誰でも」という理由で決めてしまうケースです。知名度のある方の話は楽しいのですが、翌日の朝礼で職長が「昨日の話をどう現場に落とすか」を語れないことが少なくありません。講演は娯楽ではなく、労働災害を減らすための投資です。選ぶ基準は「面白いか」ではなく、「聞いた人の明日の行動が変わるか」に置く必要があります。
条件1:現場を知っている人か
建設や製造の現場で働く方は、話し手が現場を知っているかどうかを数分で見抜きます。私自身、消防・レスキューの現場で事故の「結果」を見続けてきましたが、その経験があるからこそ「あの一手間を省いた結果がこれです」と具体的に伝えられます。講師候補の経歴を見るときは、肩書きよりも「どんな現場で、何を見てきた人か」を確認してください。
条件2:労災と自然災害を一本の線で語れるか
安全大会のテーマは労働災害が中心ですが、近年は地震や豪雨といった自然災害が現場を直撃するケースも増えています。「ヒヤリハットを放置する心理」と「避難を先延ばしにする心理」は同じ根っこです。両方を一本の線で語れる講師なら、受講者は安全と防災を別物としてではなく、「自分の命を守る技術」として受け取ってくれます。
条件3・4:聞き手を主役にできるか、時間を守れるか
三つ目は、一方的に話すのではなく、受講者に考えさせる場面を作れるかです。「今、この会場で地震が起きたら、あなたは最初に何をしますか」と問いかけるだけで、会場の空気は変わります。受講者からは「自分に置き換えて聞けた」「初めて眠くならなかった」という声をいただくことが多く、これは内容の難しさではなく、参加型の構成によるものだと感じています。四つ目は、時間と段取りを守れるかです。安全大会は表彰や来賓挨拶など進行が詰まっています。事前の打ち合わせを丁寧に行い、持ち時間の中で結論まで届ける講師を選んでください。
条件5:「明日やること」を一つ残せるか
最後の条件は、講演の終わりに「明日、現場でやること」が一つ残るかどうかです。詰め込みすぎた講演は、結局何も残りません。私は講演の最後に「今日は一つだけ持ち帰ってください」と伝えるようにしています。それが、KY活動での一言でも、ヘルメットのあご紐の締め直しでも構いません。講師に依頼するときは「受講者に何を一つ持ち帰らせたいか」を先に伝えると、講師側も構成を組みやすくなります。
明日、担当者ができること
まず、今年の安全大会で「受講者に持ち帰ってほしい行動」を一文で書き出してみてください。それが決まれば、講師に求める条件は自然と絞られます。次に、候補となる講師の経歴を「現場経験」「参加型かどうか」「打ち合わせへの姿勢」の三点で見比べます。講師の選び方が変われば、安全大会は年に一度の儀式から、現場の行動を変える一日になります。
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