港湾運送や倉庫、ターミナル運営に携わる安全管理者の方から、「港で地震が起きたとき、荷役中の作業員をどう守るか」という相談をいただきます。港湾は埋立地に立地することが多く、液状化と岸壁の損傷、大型の荷役機械、そして津波という条件が重なる場所です。この記事では、港湾の地震対策について、荷役の現場で何が起き、何を決めておくべきかを整理します。
港湾で地震が起きたとき何が壊れるか
過去の地震では、埋立地の液状化により岸壁が海側へはらみ出し、背後の地盤が沈下してエプロンに段差や亀裂が生じたとされています。ガントリークレーンのレールが歪み、脱輪や転倒に至る事例も知られています。積み上げたコンテナの荷崩れ、倉庫内のラックの転倒、タンクの配管損傷、そして地盤から噴き出す水と砂で足元が使えなくなることも想定しなければなりません。
私が現場で感じてきたのは、港湾の被害は「地面が使えなくなる」被害だということです。建物が残っていても、地盤が動けば車両も機械も動かせません。復旧の計画は、この前提から始めることになります。
荷役中の揺れ:クレーン・フォークリフト・船内
揺れの瞬間の行動は、作業の場所ごとに違います。ガントリークレーンの運転席にいるなら、吊り荷を下ろす余裕がないときは無理に操作せず、身体を固定して揺れが収まるのを待ちます。地上の作業員は、吊り荷の下、コンテナの積み上げのそば、クレーンの脚部から離れる。フォークリフトは停止し、フォークを下ろす。船内荷役中の作業員は、ハッチや移動する貨物から距離を取り、揺れが収まってから甲板へ上がります。
揺れが収まった後、真っ先に確認するのはエプロンの段差と亀裂です。液状化で地盤が変状していると、車両の走行や機械の移動そのものが危険になります。私の経験では、揺れが収まった直後に作業を再開しようとして、変状した地盤で事故になる例が少なくありません。作業再開の前に、安全管理者が地盤と機械の状態を確認する時間を確保してください。
津波警報が出たら港から離れる判断
港湾は津波が最初に到達する場所です。海に近い地域では、揺れが収まったら津波警報を待たずに高台へ向かう、という考え方が定着しつつあります。港湾の現場では、「どこへ」「どの経路で」「誰の指示で」高台へ向かうかを決めておく必要があります。港湾には高台が少ないことが多く、指定された津波避難ビルや、周辺の高い建物への避難経路を事前に確認しておきます。
難しいのは、船内や高所の機械にいる作業員の退避です。クレーンの運転席から降りるには時間がかかります。ドライバーが車両に戻ろうとして港内にとどまることもあります。「車両を捨てて徒歩で避難する」判断を、事前に会社として認めておくことが要になります。
復旧作業中の二次災害
港湾の復旧は、余震、再液状化、崩れかけたコンテナ、傾いた機械の中で行われます。私がレスキュー隊で学んだのは、復旧作業の二次災害は「急ぐ気持ち」から生まれるということです。傾いたコンテナに近づく前に固定を確認する、変状した地盤に重機を入れる前に地盤を確認する、夜間作業は照明と人員を確保してから行う。こうした基本を、復旧の初日に安全管理者が声に出して伝えてください。
明日からできる準備
- 揺れの瞬間の行動を、クレーン・地上・船内の作業ごとに決めているか
- 津波避難の場所と経路、車両を捨てる判断を共有しているか
- 作業再開前の地盤・機械の点検を誰が行うかが決まっているか
安全大会で港湾の方に話をすると、「津波は考えていたが、液状化で動けなくなることは想像していなかった」という声をいただきます。地面が使えなくなる前提で、避難と復旧を考えてみてください。
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