企業の災害対策本部は「誰が」「何を」決めるのか|初動72時間の役割分担

BCPには「災害対策本部を設置する」と書いてある。しかし、実際に誰が本部長で、本部長は何を決め、各班は何をするのか、時間の経過とともに優先順位がどう変わるのかを説明できる人は多くありません。そんな不安を抱えている経営層や総務部長の方に向けて書いています。私は消防の現場指揮や海外での災害対応を通じて、本部が「動く組織」と「集まるだけの組織」の違いを見てきました。企業の災害対策本部の設置と訓練を考えるうえで、役割と時間軸をどう整理すればよいかをお伝えします。

企業の災害対策本部が機能しない典型的な形

よくあるのは、社長を本部長にして、部長全員を本部員にした「会議体」としての本部です。全員が集まって情報を共有し合うだけで、誰も決めない。あるいは、本部長がすべての判断を抱え込み、現場からの報告が本部長の前で渋滞する。災害対応で最も避けたいのは「決めるべきことが決まらない」状態です。本部は会議ではなく、判断と指示を出す場だという前提から設計し直す必要があります。

本部長が決めること、決めなくてよいこと

本部長が自ら決めるべきことは、実は多くありません。私の整理では、大きく三つです。一つは「人命に関わる判断」で、建物からの退避、負傷者の搬送、危険区域への立ち入り禁止など。二つ目は「事業に関わる判断」で、操業を止めるか続けるか、社員を帰すか留めるか、取引先へ何をいつ伝えるか。三つ目は「対外的な判断」で、行政や報道への対応方針です。それ以外の細かな実務は各班に任せ、本部長は報告を受けて判断に集中する。この分離ができていないと、本部長は数時間で疲弊します。

各班の役割は「情報」「安全」「事業」「支援」で考える

班の名称は会社ごとに違ってよいのですが、機能としては四つに分けると整理しやすくなります。情報班は被害状況と安否を集めて本部長に一枚で報告する。安全班は建物の危険確認、救護、避難誘導を担う。事業班は取引先や仕入先、システムの状況を把握し、再開に向けた見通しをつくる。支援班は備蓄、食事、休憩、帰宅困難者の対応など、人を支える役割です。あわせて、本部長と各班長には必ず代行者を二人ずつ決めておいてください。災害は夜間や休日、出張中にも起きます。

初動72時間で優先順位はこう変わる

最初の1時間は、命と安全がすべてです。安否確認と負傷者対応、建物の危険確認、二次災害の防止に集中し、事業の話は後回しにします。3時間から24時間の間は、社員を帰すか留めるかの判断、家族との連絡支援、取引先への第一報が中心になります。24時間から72時間になると、事業再開の見通し、交代要員の確保、本部員自身の休息が課題になります。私の経験では、本部が崩れるのは初日ではなく2日目以降です。本部員が寝ていない、食べていない、家族の状況が分からない。この状態で正しい判断は続きません。交代のルールは初動の段階で決めておいてください。

明日やること

まず、本部長が決める三つの判断と、四つの班の機能を紙一枚に書き出し、それぞれに代行者を二人ずつ割り当ててください。次に、「本部長不在で夜間に発災した」という前提で、30分の図上訓練を計画します。受講者の方からは「本部長の役割を絞ったことで、初めて本部が動く実感を持てた」という声をいただきます。本部は集まる場所ではなく、決める場所です。その一点を確認するだけで、72時間の動き方は大きく変わります。

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企業の災害対策本部の役割設計、代行者を含めた図上訓練、初動72時間のシミュレーションなどを行っています。詳しくは危機管理・防災訓練のページをご覧ください。講演・研修のご相談はお問い合わせフォームからお願いいたします。

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