防災訓練の参加率が上がらない。備蓄品の説明をしても関心が薄い。「うちは大丈夫だろう」という空気が社内にある。社員の防災意識を高めたいのに、どう働きかければ「自分ごと」になるのか分からない。そんな人事・防災担当の方に向けて書いています。私は多くの災害現場で、備えていた人と備えていなかった人の差を見てきました。その経験から言えるのは、防災意識は「怖がらせる」ことでは長続きしないということです。ここでは、行動につながる5つの仕掛けを紹介します。
防災意識が「他人ごと」のままになる理由
人は、自分に起こると実感できないことに備えようとはしません。災害の映像を見て一時的に不安になっても、翌週には日常に戻ります。これは意識が低いのではなく、人として自然な反応です。だからこそ、担当者が「意識を高めよう」と呼びかけるだけでは変わりません。必要なのは、社員が自分の生活や職場の中で「ここが危ない」「これなら自分にもできる」と具体的に感じられる場面をつくることです。
仕掛け1・2:自分の席と家族から始める
最初の仕掛けは、講義ではなく観察です。5分だけ時間をとり、自分の席の周りで「地震のときに自分に向かって倒れてくるもの、落ちてくるもの」を探してもらいます。頭上の棚、キャビネット、モニター。自分の目で見つけた危険は、他人から教わった危険よりもはるかに記憶に残ります。私の経験では、この5分だけで固定金具の申請が増える職場は少なくありません。
二つ目の仕掛けは、家族の話から入ることです。会社の防災を「会社のため」と受け取ると、社員の関心は高まりません。一方で、「地震のとき、お子さんとどこで会うか決めていますか」「ご両親と連絡が取れなかったら、どうしますか」という問いには、多くの人が真剣になります。家庭の備えから会社の備えへ、という順番で話すことで、防災は「自分と家族を守ること」に変わります。
仕掛け3:小さな役割を全員に配る
防災担当者だけが動く組織では、他の社員は「見ている側」になります。フロアごとの避難誘導、備蓄の点検、負傷者の搬送など、小さくてもよいので役割を全員に配ってください。役割があると、人は訓練のときに自分の動きを考えます。「自分がやらなければ誰かが困る」という感覚が、自分ごとへの入り口になります。
仕掛け4と5:成功体験と、経営層の言葉
四つ目は、訓練で「できた」という小さな成功体験をつくることです。難しいことをやらせて失敗させるより、簡単なことを確実にできた実感を積み重ねるほうが、次の参加につながります。五つ目は、経営層が自分の言葉で防災を語ることです。「社員が無事でなければ会社は続かない」という一言が、担当者の百回の呼びかけより効く場面を私は何度も見てきました。受講者の方からは「講演のあと、社長が自分の言葉で話してくれたのが一番響いた」という声をいただくことがあります。
明日やること
- 次の朝礼やミーティングで「自分の席の危険を探す5分」を実施する
- 家族との連絡方法を話し合う宿題を、社内報や掲示で呼びかける
- 次回の訓練で、全員に一つずつ小さな役割を割り当てる
防災意識は、一度の講演で劇的に高まるものではありません。日常の中に小さな仕掛けを置き続けることで、少しずつ「自分ごと」に変わっていきます。
関連サービス
社員の防災意識を行動につなげる講演や、家庭の備えから職場の備えへとつなぐセミナーを行っています。詳しくは防災セミナー・講演のページをご覧ください。講演・研修のご相談はお問い合わせフォームからお願いいたします。