「自主防災組織は数だけ揃っているが、実際に動けるところは少ない」。自治体の地域防災担当の方から、こうした声を聞くことが増えました。結成率は高くても、年に一度の役員交代と書類提出だけで終わっている地域は珍しくありません。
この記事では、自主防災組織が形骸化する理由と、育成・活性化のために自治体ができることを、私が地域の現場で見てきたことをもとに整理します。
自主防災組織が形骸化する三つの理由
まず、なぜ止まってしまうのかを分けて考える必要があります。私の経験では、原因はおおむね三つに集約されます。
一つ目は、役員が自治会長の兼任で、任期一年で入れ替わることです。引き継ぎのたびに知識がゼロに戻ります。二つ目は、活動が「自治体から言われた訓練をこなす」形になり、地域の人が自分たちの課題だと感じていないことです。三つ目は、活躍の場が災害時に限られ、平時に成果を実感する機会がないことです。人は、意味を感じられない活動を続けられません。
「訓練の回数」で評価すると弱くなる
自治体側が活動状況を訓練回数や参加人数で評価すると、組織は数字を満たすための行事を選びます。結果として、毎年同じ消火器訓練とバケツリレーが繰り返され、参加者は「知っている話」に飽きていきます。
私は災害現場で、助かった地域と助からなかった地域の差を何度も見てきました。差を生むのは訓練の回数ではなく、「隣に誰が住んでいて、誰が自力で逃げられないか」を知っているかどうかでした。評価の軸をここに置き換えると、組織の活動は自然と変わります。
立て直しは「小さく・具体的に・成果が見える」から
形骸化した組織を一気に活性化しようとすると、役員が疲弊してさらに離れます。有効なのは、負担が小さく成果が見える活動から始めることです。
- 地区の地図に、要配慮者の家と、声をかける担当者の名前を書き込む「声かけマップ」づくり
- 訓練ではなく「町内を歩いて危険な場所を写真に撮る」まち歩き
- 災害時に使う集合場所で、実際に集まって顔合わせをするだけの30分
いずれも道具はほぼ不要で、終わったときに「何ができたか」が目に見えます。受講者からは「訓練より、まち歩きの方が住民同士の会話が生まれた」という声をいただきます。
消防団・学校・事業所を巻き込む
自主防災組織だけで完結させようとすると、担い手はすぐ限界を迎えます。地域には消防団、学校、保育園、事業所という別の担い手がいます。消防団員に訓練の指導役を頼む、学校の防災授業に地域の役員が参加する、事業所の駐車場を一時避難場所として使わせてもらう。つなぎ役として自治体が間に入ると、組織の活動は一気に広がります。
特に、若い世代が関わる保育園や小学校との接点は、役員の高齢化に対する現実的な処方箋になります。
自主防災組織の育成・活性化に向けた明日の一歩
まず、担当地区のうち一つを選び、役員の方に「訓練をどうするか」ではなく「自力で逃げられない方は何軒ありますか」と尋ねてみてください。答えられない地区こそ、声かけマップから始める価値があります。自主防災組織の育成・活性化は、大きな仕掛けより、住民が「自分たちの地域の話だ」と感じる小さな成功体験の積み重ねから動き出します。
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