高知県は、南海トラフ地震で全国でも最大級の津波が想定され、日本有数の多雨地帯でもあり、県土の大部分が山地で集落の孤立が避けられない県です。この記事は、高知県の知事・県庁職員・危機管理担当の方に向けて、高知県の災害特性と、県庁が発災前に準備しておくべきことを整理します。
高知県の災害特性|最大級の津波と長い海岸線、深い山
高知県の太平洋沿岸は東西に長く、南海トラフ地震では黒潮町をはじめ、非常に高い津波が短時間で到達するとされています。津波避難タワーの整備が全国に先駆けて進んだのはこのためです。県都の高知市は浦戸湾に面した低平地で、地震の地盤沈下によって市街地の広い範囲が海面より低くなり、浸水が長期化する想定があります。県庁そのものが浸水想定区域に近いことも、他県にはない緊張感です。さらに、四国山地が県の北側を覆い、四万十川・仁淀川・物部川といった河川の上流には、道路が一本しかない集落が数多くあります。台風の常襲地帯でもあり、豪雨による土砂災害と河川の増水は毎年のように起きます。高速道路網が県東部・西部で十分でなく、発災後に県外から陸路で入る経路が限られる点も、受援の大きな制約です。
災害対策本部の設置と初動|「動けない本部」を想定する
高知県の初動で最も重要なのは、本部そのものが機能しない場面を想定することです。強い揺れで県庁のライフラインが止まり、職員の多くが被災し、通信が途絶する。この状態でも、県のどこかで誰かが指揮を執れるよう、代替本部と権限の委譲を事前に決めておいてください。初動の情報収集では、沿岸の市町村からの報告を待つのではなく、ヘリや衛星画像で県が自ら被害の全体像をつかむ仕組みが必要です。私の経験では、最初の数時間に「どこに助けが必要か」を描けるかどうかで、その後の救助の成果が変わります。
市町村・国・自衛隊との連携と受援
沿岸の町では、庁舎も職員も津波で失われる可能性があります。県は各市町村の代替庁舎と、被災時に代わって指揮を執る県の担当者を、あらかじめ決めておくことです。自衛隊は高知駐屯地に加え、海上・航空からの大規模な応援が必要になるため、高知空港と、高知自動車道沿いなど内陸の拠点を受援の中継地として整理してください。国の広域支援は、四国全体が同時に被災する前提で、瀬戸内側の県から高知へ回ってくる形になります。県が「何を、どこに、どれだけ」欲しいかを先に示せるよう、要請の様式を平時に用意しておくことが受援の第一歩です。
要配慮者・孤立集落と県民への情報発信
高知県の中山間地は高齢化が進み、集落の孤立は「もしも」ではなく「必ず起きる」前提で備える必要があります。孤立想定集落ごとに、ヘリの離着陸場所、衛星電話の有無、食料と医薬品の備蓄日数を県が一覧にしておいてください。沿岸の要配慮者は、津波避難タワーや高台まで自力で行けるかどうかで対応が分かれます。情報発信では、「揺れたら即座に高いところへ」という一点を、県民が体で覚えるまで繰り返すことが、私は最も効果があると考えています。
職員の訓練と交代体制、明日やること
本部の訓練は、参集率が低い状態と、代替本部への移行を必ず含めてください。三交代が組めない場合の「最低限の機能」を決めておくことも大切です。受講者からは「本部が使えなくなる想定は考えていなかった」という声をいただきます。明日やることは、①代替本部と権限委譲の手順を文書で確認する、②孤立想定集落の一覧に備蓄日数を加える、③受援要請の様式を作る、の3点です。
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