大規模災害時の御遺体対応サイト「XDMORT.COM」を公開しました

2026年10月2日 · @Sunny

誰もが避けたい、けれど誰かが必ず向き合うこと

大規模災害時の御遺体対応をまとめた手引きのサイト「XDMORT.COM」を公開しました。御遺体の搬送・収容・管理から、ご遺族への引き渡し、仮埋葬と改葬、そして対応にあたる人の心のケアまでを、1つのサイトにまとめています。

災害への備えというと、避難や備蓄、救助の話が中心になります。しかし大きな災害では、亡くなった方をどう迎え、どうご家族のもとへお返しするかという仕事が、必ず発生します。

その現場に立つのは、多くの場合、葬祭の専門家ではありません。自治体の職員であり、消防団員であり、地域の関係者です。平時にほとんど語られないこの仕事を、いざという時に迷わず、尊厳をもって行えるようにしたい。それがこのサイトをつくった理由です。

東日本大震災が残した教訓

東日本大震災では、火葬場の被災や停電、燃料不足で火葬が追いつきませんでした。宮城県だけで約2,100体の方が仮埋葬され、その多くは数か月のうちに掘り起こされて火葬されました。

想定していなかった早期の改葬は、ご遺族の心にも、作業にあたった職員の心にも深い傷を残しました。「土の中に一人で置いていく」ことへの抵抗、腐敗が進んだ御遺体と向き合う過酷さ。準備がないまま現場に立つことの重さが、記録や証言から伝わってきます。

南海トラフ地震では、最悪の場合、死者は約29.8万人と想定されています。安置所をどこに開くか、誰が運ぶか、火葬場が足りない時にどうするか。これらは発災後に考えていては間に合いません。

XDMORT.COMで分かること

サイトは15の章で構成し、発見から火葬までの流れに沿って読めるようにしました。

  1. 全体の流れと体制(チームの編成、出動時の初動)
  2. 御遺体の搬送(誰が、どのように運ぶか。過去の課題と改善点)
  3. 安置所の準備(場所の選び方、レイアウト、冷蔵による保管)
  4. 防護衣と感染対策(着方・脱ぎ方、体液の処理、感染症の誤解と事実)
  5. 収容・タグ付け(納体袋への収納、番号の付け方、身体の一部や所持品の扱い)
  6. 検視・検案と手続き(流れと動線、死亡届・火葬許可の書類)
  7. 管理表と安置中の管理(写真撮影、ドライアイス、腐敗臭への対応)
  8. ご遺族への対応(写真による確認、引き合わせ方、声がけ)
  9. 行方不明者と情報発信(相談窓口、報道対応、外国人の御遺体)
  10. 葬祭業者・広域火葬
  11. 仮埋葬・掘り起こし(場所の選定、穴の寸法、改葬の手順)
  12. 研修・訓練
  13. ストレスと心のケア
  14. チェック・まとめ
  15. 参考資料

手順はステップの図に、安置所や仮埋葬地の配置、検視場の動線、穴の寸法は図解にしています。スマートフォンでも読めるので、研修の場だけでなく現場でも開いていただけます。

国内外12の資料から学んだこと

内容は、WHO・赤十字国際委員会(ICRC)・汎米保健機構の国際マニュアル、インドとフィリピンの国のガイドライン、東京都の検視・検案等活動マニュアル、広域火葬計画、厚生労働省の通知などに基づいています。読み込んでいくと、現場ですぐ使える知恵がたくさんありました。いくつかご紹介します。

  • 番号は、最初から最後まで一つ。発見場所・チーム名・連番を組み合わせた固有番号を付け、付け替えません。粘着ラベルが水や体液ではがれ、取り違えが起きた事例もあります。
  • 冷やすが、凍らせない。国際マニュアルは2〜4℃の冷蔵を第一としています。凍らせると変色や乾燥で、かえって身元確認が難しくなります。
  • ドライアイスは二酸化炭素に注意。厚生労働省のガイドラインは、棺をのぞき込まないこと、20〜30分に1回の換気などを示しています。付き添いの夜は特に注意が必要です。
  • 「御遺体が疫病を広げる」は誤解。自然災害の御遺体が感染症の流行を起こすことは通常ありません。急いだ集団埋葬や消石灰の散布には、公衆衛生上の根拠がないとされています。ただし、作業員の手袋や手洗いは必要です。
  • 行方不明者の相談窓口を早く開く。「歯の見える笑顔の写真」や「本人が使っていたくしや歯ブラシ」は、身元確認の大切な手がかりになります。
  • 報道への発表は窓口を一本化。氏名の公表は、ご家族へ伝えた後に行います。

資料の間で考え方が異なる点(消石灰やドライアイスの扱い)は、両方の立場を明記しました。すべての項目に出典を付けています。

ご遺族の心と、職員の心を守る

御遺体対応は、手順を守れば終わる仕事ではありません。ご家族にとっては、大切な人との最後の対面になるかもしれない時間です。

そのためサイトでは、引き合わせの前に持ち物や服装の写真で確認していただく方法を詳しく紹介しました。対面の前に御遺体の状態を穏やかに伝えることも大切です。「頑張ってください」「お気持ちはわかります」といった、かえって傷つけてしまう言葉についても触れています。

そして、対応にあたる職員自身も、多くは被災者です。知人や子どもの御遺体に向き合い、交代要員もなく働き続ける。眠れない、臭いで場面がよみがえるといった反応は、誰にでも起こる「異常な事態への正常な反応」です。

サイトでは、惨事ストレスの兆候、心構え、セルフケア、仲間どうしの声かけを、具体的な言葉の例とともにまとめました。仲間を気づかうことが、自分を守ることにもなります。

研修でそのまま使える資料

サイトからは、次の資料をダウンロードできます。地域の計画に合わせて、自由に編集してお使いください。

資料形式内容
研修スライドPowerPoint(16:9・4:3・A4縦)各97枚、文字は20pt以上で大きく
御遺体管理表Word(印刷用)1体1枚の記入用紙
墓標情報管理表Word(印刷用)仮埋葬地の台帳と巡回点検記録
管理表(入力用)Excel500体分。自動集計と表どうしの連動

また、サイトは右上のスイッチで日本語と英語を切り替えられます。海外の支援チームや、日本で暮らす外国籍の方との共有にもお役立てください。

地域の備えを、今日から

まずはサイトの「平時の準備チェックリスト」を開いてみてください。安置所の候補、搬送の協定、仮埋葬の候補地、職員の心のケアの体制。どれか一つでも、話し合うきっかけになれば嬉しく思います。

自治体、消防団、警察、医療、葬祭の皆さまの研修で、ぜひご活用ください。ご意見や、現場での経験もお寄せいただければ、内容を磨いていきます。

御遺体の尊厳、ご家族の心、そして職員の心を守ることも、災害対応の大切な一部です。

一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事 サニー カミヤ

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