住所から始める防災 ― xrisk.jp コラム

「自分の家で何が起きるか」を言葉にできますか

ハザードマップを一度も見たことがない、という人は今では少なくなりました。それでも「大きな地震が来たら、わが家では何が起きるのか」を自分の言葉で説明できる人は、多くありません。

地図は色で塗り分けられていて、凡例を読み解く必要があります。洪水、津波、土砂災害と、災害ごとに別の地図を開かなければなりません。防災の第一歩は「自分の住む場所の性格を知ること」ですが、その入り口が意外と高いのです。

災害は「日本のどこか」ではなく、いつも「ある住所」で起きます。だからこそ、防災は住所から始めるのがいちばん確かです。

地図の「色」を「言葉」に置き換える

xrisk.jp(わが家のハザードカルテ)は、住所を入れるだけで、その地点の災害リスクを文章で説明するウェブサイトです。地図の色を読み解く作業を、代わりに引き受けます。

たとえば洪水のハザードマップで薄いピンク色の場所は、「想定最大規模の大雨で浸水深0.5〜3m、床上浸水のおそれ」と表示されます。地震、津波、大雨・台風、火山の4つの分野を1ページにまとめ、危険度を色分けした一覧で全体像をつかめるようにしています。

判定に使っているのは、すべて公的機関が公開しているデータです。

  • 国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」の洪水・内水・高潮・津波・土砂災害の想定
  • 防災科学技術研究所「J-SHIS(地震ハザードステーション)」の地震発生確率と地盤の情報
  • 内閣府と各都道府県(東京都を含む)が公表している地震・津波の被害想定
  • 気象庁と各地の火山防災協議会がまとめている火山ハザードマップ

地震は「揺れの大きさごと」に考える

地震への備えは、「大きな地震」とひとまとめにせず、揺れの大きさごとに考えると具体的になります。xrisk.jp では、震度5弱・5強・6弱・6強以上のそれぞれについて、今後30年以内にその地点がその揺れに見舞われる確率を表示します。

震度5弱なら棚の食器が落ちる程度でも、6弱になると立っていられず、耐震性の低い木造住宅では傾きが出始めます。同じ地点でも、揺れの大きさで起きることはまったく違います。確率と揺れの様子を並べて見ると、「家具の固定」で足りるのか、「建物の耐震」まで考えるべきかが見えてきます。

揺れと一緒に起きる地盤の被害も、地点ごとに表示します。

  • 液状化:埋立地や旧河道、砂丘のあいだの低地などは、揺れが強いと地盤が液体のようになり、家が傾いたり、マンホールが浮き上がったりします。地形の分類から、震度ごとの起きやすさを示します。
  • がけ崩れ:近くに土砂災害警戒区域がある場合は、強い揺れで斜面が崩れるおそれを知らせます。

さらに、その都道府県が被害想定で取り上げている主な地震(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、地域の活断層の地震など)を、規模と県内の最大震度とともに一覧にしています。

津波・大雨・火山は「深さ」と「時間」で考える

水や火山の災害では、「どれくらいの深さ(量)か」と「どれくらいの時間か」が、とるべき行動を決めます。

津波:最大クラスの津波が来た場合の、その地点の浸水深を表示します。1mを超えると歩いて逃げることは難しくなり、3mを超えると1階が水没します。都道府県や市町村の想定にもとづく「高さ1mの津波が来るまでの時間」もあわせて示します。到達まで数分という沿岸も少なくありません。強い揺れや長い揺れを感じたら、警報を待たずに高い場所へ向かうことが基本です。

大雨・台風:川があふれる洪水、下水や水路があふれる内水、台風による高潮の浸水深を示します。浸水が何日続くかも表示します。水が数日引かない場所では、家にとどまるなら水・食料・トイレの備えが数日分では足りません。堤防が壊れたとき家ごと流されるおそれがある「家屋倒壊等氾濫想定区域」や、土砂災害警戒区域(イエロー・レッドゾーン)に入っている場合は、早めの立ち退き避難が必要です。

火山:近くの火山ごとに、火砕流・溶岩流・降灰が届く可能性の目安を示します。日本の上空には偏西風が吹くため、灰は火山の東側に多く積もる傾向があります。数mmでも目やのど、車や交通に影響が出ます。1cmを超えると車の通行が難しくなり、停電や断水も起きやすくなります。

自宅だけでなく、出張先や旅行先でも

私たちは一日の多くを自宅の外で過ごします。災害は、土地勘のない出張先や旅行先で起きることもあります。そんなとき、近くの高台がどこか、ホテルが浸水しやすい場所かどうかを、すぐに判断するのは難しいものです。

xrisk.jp は日本国内ならどの住所でも調べられます。住所のほか、地図アプリからコピーした緯度経度でも検索できます。おすすめの使い方は次のとおりです。

  • 出張先のホテルや会場、旅行先の宿を、予約のときに確認する
  • 離れて暮らす親や家族の住まいを調べ、電話で一緒に備えを話し合う
  • 子どもの学校や勤務先など、毎日長い時間を過ごす場所を確認する
  • 引っ越しや住宅購入の候補を比べるときの材料にする

日本語と英語を切り替えられるので、海外から日本を訪れる方や、日本で暮らす外国籍の方にも紹介できます。

結果を見たら、今日やること

リスクを知ることはゴールではなく、行動を決めるための材料です。結果を見たら、次のことから始めてみてください。

  1. 揺れが強い・確率が高い:家具を固定し、寝室に倒れる物を置かない。建物が古ければ耐震診断を検討する。
  2. 浸水が想定されている:浸水しない避難先と、そこまでの道を家族で確認する。数日分の水・食料・簡易トイレを備える。
  3. 津波の到達が早い:揺れたらすぐ向かう高い場所(高台や津波避難ビル)を決め、実際に歩いて時間を測る。
  4. 土砂災害警戒区域に入っている:「土砂災害警戒情報」が出たら避難する、と家族で決めておく。
  5. 降灰の影響がある:マスクやゴーグル、数日分の食料を備え、車の利用を控える判断基準を決める。

なお、xrisk.jp の判定は公開されているハザードマップの画像を地点ごとに読み取った自動判定と、資料の数値にもとづく概算です。火山の到達範囲や津波の到達時間は、火山単位・都道府県単位の想定からの目安で、その地点を計算したものではありません。避難の判断は、必ずお住まいの市区町村のハザードマップと、自治体が出す避難情報で確認してください。

まず、ひとつの住所から

災害への備えに、完璧な正解はありません。けれども「自分の場所で何が起こりうるか」を知っている人は、いざというときに迷う時間が短くなります。その数分が、命を守る行動につながります。

まずは今日、ご自宅の住所をひとつ入れてみてください。次に、大切な家族の住所を。そして次の出張や旅行の前に、泊まる場所を。

▶ https://xrisk.jp


作成:一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事 サニー カミヤ

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