「住民向けの防災セミナーを開いても、来るのはいつも同じ顔ぶれ」。自治体の防災担当の方から、この悩みを何度も聞いてきました。本当に来てほしい若い世代や子育て家庭ほど来ない、というのも共通しています。
この記事では、住民向け防災セミナーの参加者を増やすために、企画・告知・内容の三つをどう見直すかを、私自身が講師として感じてきたことを交えて整理します。
住民向け防災セミナーに人が来ない理由
参加者が増えない理由は、住民の防災意識が低いからではありません。多くの場合、案内の時点で「自分に関係がある」と感じられていないのです。
「大地震への備え」という題名は正しいのですが、忙しい人にとっては遠い話です。一方で「停電した夜、子どもと何をして過ごすか」「高齢の親と離れて暮らす人の連絡の取り方」のように、生活の場面に落とした題名は自分ごとになります。私の経験では、内容を変えなくても、題名と案内文を生活の言葉に変えるだけで反応が変わります。
「怖い話」は一度しか効かない
被害の映像や悲惨な数字で危機感を煽ると、その場では真剣に聞いてもらえます。しかし怖さは長続きせず、「怖いから考えたくない」という回避にもつながります。次回の案内を見たときに「また重い話か」と感じさせてしまえば、リピーターは減ります。
私は多くの災害現場を経験してきましたが、講演で伝えたいのは恐怖ではなく「助かった人は何をしていたか」です。受講者からは「怖がらせるのではなく、できることを具体的に教えてもらえた」という声をいただきます。できる話は、家に帰ってから行動につながりますし、隣の人にも話したくなります。
参加者を増やす三つの見直し
- 企画:対象を絞る。「全住民向け」より「小学生の保護者向け」「一人暮らしの高齢者向け」の方が、当事者に届きやすい
- 告知:防災の言葉を減らし、場面と時間で語る。「30分で家の備えが決まる」など、参加後に何が手に入るかを書く
- 内容:講義だけで終えず、隣の人と一つ話す時間や、その場で家族に連絡してみる時間を入れる
特に三つ目は重要です。体を動かし、声を出した記憶は残ります。「聞いた話」より「やってみた体験」の方が、口コミになりやすいのです。
既存の集まりに「乗せる」発想
防災のためだけに人を集めるのは難しくても、すでにある集まりに防災を乗せることはできます。学校の保護者会、公民館の趣味講座、商店街の会合、保育園の行事。これらに20分の防災の話を加えるだけで、防災セミナーに来ない層に届きます。
この方法は、担当者にとっても会場確保や動員の負担が小さく、続けやすいという利点があります。
住民向け防災セミナーで明日からできること
次回の案内文を見直し、「地震」「防災」という言葉を一つ減らして、住民の生活場面の言葉に置き換えてみてください。そして講師に「怖い話ではなく、できる話を中心に」と依頼してみてください。住民向け防災セミナーの参加者を増やす鍵は、動員の努力より、住民が「行けば何かできるようになる」と感じられる設計にあります。
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