「避難所の担当に指名されたが、実際に何をすればいいのか想像がつかない」。自治体職員の方から、避難所運営についてこうした不安をよく伺います。マニュアルはあっても、真夜中に鍵を開ける瞬間から何が起きるかは書かれていません。
この記事では、避難所運営の研修でお伝えしている「開設から72時間」の実務を、職員が最初にぶつかる壁ごとに整理します。
避難所運営の最初の壁は「開設の瞬間」に来る
私の経験では、最初の混乱は避難者が到着してからではなく、職員が施設に着いた瞬間に始まります。鍵がどこにあるか、施設管理者と連絡がつくか、電気が点くか、使ってよい部屋とそうでない部屋はどれか。ここで15分迷うと、玄関先に人が並び、その後の受付が崩れます。
対策は単純で、担当する避難所に平時に一度足を運び、鍵の場所と開ける順番、使える部屋を自分の目で確認しておくことです。これだけで初動の混乱は大きく減ります。
最初の3時間:受付と「決めない」ことの怖さ
避難者が集まり始めると、受付名簿の記入、居住スペースの割り振り、ペット、車中泊の希望、と判断が一気に押し寄せます。ここで職員が「本部に確認してから」と保留を重ねると、避難者の不満が一気に高まります。
研修では、「その場で決めてよいこと」と「本部に確認すること」を事前に分けておくことを勧めています。居住スペースの割り振りや通路の確保は現場で決め、物資の配分や避難所の統廃合は本部に上げる、といった線引きです。線引きが職員の手元にあるだけで、判断のスピードは変わります。
12時間まで:要配慮者とトイレが避難所の質を決める
体育館の床に長時間座れない高齢者、人混みが苦手な発達障害のある方、乳児を抱えた母親、透析や薬が必要な方。これらの方々を「一般の避難者と同じ場所で」過ごさせると、体調悪化が始まるのは半日以内です。福祉的な配慮が必要な方の場所を最初に確保しておくと、後からの移動という難題を避けられます。
そしてトイレです。私は多くの災害現場で、トイレの状態が避難所全体の空気を決めるのを見てきました。水が流れるか、簡易トイレの設置場所、清掃の当番。ここを開設当初から住民と一緒に決めておくことが、72時間後の衛生状態を左右します。
24〜72時間:職員だけで回そうとすると壊れる
丸一日を過ぎると、職員の疲労が限界に近づきます。ここで避難者に「お客様」でいてもらうと、職員は倒れ、避難者の不満も溜まります。受付、配食、清掃、見回りを住民の班に委ねていく移行を、遅くとも24時間以内に始める必要があります。
受講者からは「住民に頼むのは失礼だと思っていたが、役割があることで避難者が元気になると知った」という声をいただきます。役割は負担ではなく、被災した人の尊厳を支える手段でもあります。
避難所運営の研修で明日から準備できること
担当避難所の鍵の場所を確認し、「現場で決めてよいこと」を上司と10分話すこと。この二つは明日できます。避難所運営は職員個人の頑張りで支えるものではなく、平時の確認と住民との役割分担で支えるものです。研修で体験しておけば、真夜中の鍵開けの瞬間に、頭ではなく体が動きます。
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