広島県で危機管理を担当する方が最も重く受け止めているのは、繰り返し起きてきた土砂災害ではないでしょうか。この記事は、広島県の知事・県庁職員・危機管理担当の方に向けて、広島県の災害特性と、県庁が発災前に準備しておくべきことを、レスキュー隊員としての経験も交えて整理します。
広島県の災害特性|まさ土の山と海に面した三角州の都市
広島県の山地の多くは花崗岩が風化した「まさ土」でできており、大雨で崩れやすい性質を持っています。その山裾まで宅地が広がった結果、広島市安佐南区・安佐北区などの住宅地が土石流に襲われた平成26年の広島豪雨、そして西日本豪雨と、県内では土砂災害が繰り返されてきました。一方、広島市の中心部は太田川がつくった三角州で、地盤が軟らかく、高潮や津波の浸水想定区域が広がります。南海トラフ地震では瀬戸内海への津波到達は比較的遅いとされていますが、液状化や港湾施設の被害は、自動車・造船・鉄鋼といった県の基幹産業を直撃します。さらに、江田島・大崎上島・しまなみ海道沿いの島々といった島しょ部では、橋や航路が止まれば即座に孤立します。呉市や尾道市のように、斜面に住宅が張り付いた坂の町で高齢化が進んでいることも、避難を難しくする要因です。
災害対策本部の設置基準と初動|土砂災害警戒情報を起点に
広島県の場合、地震の震度だけでなく、土砂災害警戒情報の発表を本部体制の切り替え基準に組み込むことをおすすめします。土砂災害は夜間・未明に集中して発生する傾向があり、「明るくなってから判断する」では間に合いません。私の経験では、初動で最も価値があるのは「どの地区で何棟が土砂に巻き込まれたか」という粗い情報を、早く本部に集めることです。消防・警察・市町村からの第一報を一つの画面に集約する仕組みを、平時に整えておいてください。
市町村・国・自衛隊との連携と受援
県内には海田市駐屯地をはじめ自衛隊の拠点があり、広島市消防局は全国でも大きな消防本部の一つです。県の役割は、これらの実動部隊が最も必要な場所に向かえるよう、被害の全体像を描いて優先順位を示すことです。土砂災害では、道路が寸断されて重機が入れない地区が生じます。国土交通省の緊急災害対策派遣隊や建設業協会との協定を、実際に動かせる担当者レベルまで落とし込んでおくことが受援の鍵です。島しょ部については、海上保安庁や民間フェリー会社との連絡ルートも確認しておきましょう。
要配慮者・孤立地域と県民への情報発信
坂の町の高齢者、島の住民、そして平和記念公園や宮島を訪れる外国人観光客。広島県には、避難の形が全く違う人たちが同時に存在します。県は市町村と連携して、斜面地の高齢者に対する早めの避難呼びかけと、観光客向けの多言語での情報提供を両立させる必要があります。情報発信で私が強調したいのは、「避難指示が出ても、外に出る方が危ない場合がある」ことを伝える難しさです。土石流の危険が迫った深夜には、2階の山と反対側の部屋へ移る屋内での安全確保が有効なこともあります。この判断の材料を、平時から県民に届けておいてください。
職員の訓練と交代体制、明日やること
土砂災害の対応は、行方不明者の捜索が長期化しやすく、職員の疲労が蓄積します。本部要員は三交代を基本に、休む勇気を持てる文化をつくってください。受講者からは「交代のルールがないまま何日も本部に詰めていた」という声を聞くことがあります。明日やることは次の3点です。
- 土砂災害警戒情報を本部体制の切り替え基準に入れているか確認する
- 島しょ部の市町ごとに、航路・橋が止まったときの連絡・輸送手段を一覧にする
- 外国人観光客向けの多言語情報の発信手順を、観光部局と一緒に確認する
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