災害時の保健所・保健師の役割|避難所の健康管理

保健所の管理職や保健師の方から、「災害時に自分たちは何を最優先にすべきか、平時から整理しきれていない」という声を聞きます。災害時の保健所・保健師の役割は、避難所の健康管理を中心に、地域全体の健康を守ることにあります。この記事では、発災後に保健所と保健師が担う仕事を時系列で整理し、発災前に整えておくべき体制を、私が災害現場で見てきた実態をもとに書きます。個々の医学的判断には踏み込みません。

災害時に保健所が担う役割の全体像

発災直後、医療は救命を担う医療チームが中心になりますが、数日たつと避難所での生活そのものが健康を損ない始めます。ここからが保健所と保健師の出番です。避難所の環境、避難者の持病の悪化、感染症の広がり、心の不調、要配慮者の把握。これらを地域全体で見渡し、優先順位をつけて対応するのが保健所の役割です。同時に、外部から入ってくる医療・保健の応援チームを調整し、情報を一つにまとめる機能も求められます。

避難所の巡回で見るべきこと

保健師が避難所を回るとき、何を見るかを共通の様式で決めておくことが重要です。私が海外を含む災害現場で見てきた避難所の問題は、どこでも似ています。

  • 環境:トイレの数と清潔さ、手洗い場、換気、寝床の密集度、温度管理
  • 人:持病のある方、妊産婦、乳幼児、高齢者、障害のある方の把握と、必要な支援がつながっているか
  • 健康:発熱や下痢などの症状のある方の有無、食事と水分の状況、身体を動かせているか
  • 心:眠れない、話さなくなった、落ち着かない人がいないか、支援者自身の疲労

特に、長時間同じ姿勢でいることによる血栓の問題や、感染症は、避難所の環境改善で予防できる部分が大きいとされています。健康相談だけでなく、避難所の運営側に環境の改善を働きかけることも、保健師の重要な仕事です。

要配慮者と在宅避難者を見落とさない

避難所にいる人は見えますが、車中泊の方、壊れた自宅に残っている方、福祉避難所へ移るべきなのに一般避難所にいる方は見えにくい。受講者からは「避難所を回るだけで手一杯で、在宅の人まで届かなかった」という声をいただきます。平時から、避難行動要支援者の名簿や、訪問看護・介護事業所との連携で、発災後にどう情報を集めるかを決めておくことが対策になります。

外部応援の受け入れと情報の一元化

大きな災害では、他の自治体の保健師チームや、災害時健康危機管理支援チームなどが応援に入ります。受け入れ側の保健所に、応援チームの活動場所、報告の様式、毎日の会議の時間が決まっていないと、応援は力を発揮できません。私の経験では、受け入れの準備ができている組織ほど、応援を早く戦力に変えていました。

また、避難所ごとの健康状況を毎日集約し、災害対策本部と共有する仕組みが必要です。紙の様式でも構いませんが、「誰が集め、誰がまとめ、誰に届けるか」を平時に決めておきます。

保健師自身を守る体制

忘れてはならないのが、保健師自身も被災者であり、長期戦になるということです。発災から数週間、休みなく避難所を回れば、必ず倒れる人が出ます。交代の計画、休養の確保、業務の優先順位づけを、所長や管理職が最初の段階で示すことが、結果として地域の健康を守ります。

災害時の保健活動に向けて明日やること

まず、避難所巡回の様式が所内で統一されているかを確認してください。次に、応援チームを受け入れる場所と報告の流れを紙一枚に書いてみる。そして、職員の交代と休養の考え方を管理職の間で共有する。災害時の保健所・保健師の役割は広く、準備した分だけ避難所の健康管理は確実になります。

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