遊園地・大型施設の災害避難|大勢を混乱なく動かす方法

遊園地、テーマパーク、大型のアミューズメント施設を運営されている方から、「地震や火災のとき、何千人もの来場者をどう動かせばいいのか」という相談をいただきます。少人数のスタッフで大勢を動かす場面では、避難そのものより「混乱」が人を傷つけます。この記事では、アミューズメント施設の災害避難について、群衆を安全に動かすための考え方を整理します。

大勢を動かすときに起きること

私が消防で経験した大規模施設の現場や、海外での群衆事故の事例から言えるのは、災害時の群衆の危険は火や揺れそのものより、「情報の空白」と「出口への集中」から生まれるということです。何が起きたのか分からない、どこへ行けばいいのか分からない、という状態が続くと、人は周りの人が走る方向へ走ります。狭い通路や階段に人が集中し、転倒が転倒を呼ぶ。これが群衆事故の典型です。

もう一つ、遊園地に特有なのが「家族の分断」です。子どもがアトラクションに乗っていて親が外で待っている、きょうだいが別の場所にいる。親は子どもを探して人の流れに逆らって動きます。この動きが避難の流れを乱し、危険を生みます。

「止める」「留める」「動かす」の三段階

大勢を安全に動かすには、いきなり避難させないことが要です。私が勧めているのは三段階の考え方です。第一段階は「止める」。アトラクションと動線を止め、来場者をその場で待たせ、館内放送で「係員の指示があるまでその場でお待ちください」と伝えます。第二段階は「留める」。エリアごとに来場者をまとめ、状況を伝え、混乱を抑えます。第三段階は「動かす」。エリアごとに順番を決め、出口を分散させて誘導します。

この三段階のうち、最も難しく、最も効果があるのは第一段階です。全員が一斉に動き出す前に「止める」ことができれば、その後の誘導は格段に楽になります。放送の第一声を誰が、どの文言で流すかを、事前に決めておいてください。

アトラクション・高所からの救出

地震や停電でアトラクションが停止した場合、高所や閉じた空間に来場者が取り残されます。ここでの原則は、「安全に停止しているなら、慌てて降ろさない」です。私がレスキュー隊で学んだのは、救出を急いで二次災害を起こすことの怖さでした。余震や再停電を想定し、まず取り残された方に声を届け、状況を伝え、落ち着いてもらう。救出の手順と担当者はアトラクションごとに決めておき、消防への通報のタイミングも事前に線引きしておきます。

スタッフ自身の安全も同じです。高所へ登る、暗い機械室へ入る、といった行動は、必ず二人一組で、連絡手段を持って行ってください。

家族の再会場所と情報発信

親が子どもを探して逆走する動きを防ぐには、「はぐれたときの再会場所」が来場者に周知されていることが要です。入場時の案内、園内の掲示、アプリやチケットへの記載など、平時から伝えておくことで、発災時の混乱を減らせます。避難後は、再会場所で待つ家族に対して、どのエリアの来場者がどこに避難したかを伝える係を置きます。

情報発信は、館内放送、スタッフの声、掲示、SNSを組み合わせます。同じ内容を、同じ言葉で、繰り返し伝えることが混乱を抑えます。「詳細が分からない」ときは「現在確認中です。その場でお待ちください」と伝えるだけでも、情報の空白を埋められます。

明日からできる準備

  • 発災時の放送の第一声を、文言と担当者まで決めているか
  • エリアごとの避難順序と、出口の分散が計画されているか
  • 再会場所が来場者に周知されているか

受講者からは「避難訓練は動かすことばかり考えていた」という声をいただきます。止めること、留めることも避難の一部だと考えると、計画の見え方が変わります。

関連サービス

日本防災教育訓練センターでは、レジャー・サービス施設の安全大会向けに、群衆の避難誘導と施設の危機管理をテーマにした安全大会講演を行っています。講演・研修のご相談はお問い合わせフォームからお願いいたします。

講演・研修のご相談はお気軽に

内容・日程・ご予算に応じてご提案いたします。まずはお問い合わせフォームまたはお電話でご連絡ください。

お問い合わせフォームへTEL 03-6432-1171(平日 9:00〜18:00)
電話で相談 フォームで相談