地方議員の方から、「災害のとき、自分は何をすればいいのか」「役所に電話すると迷惑になると言われた」という相談をいただきます。議員は住民に最も近い立場でありながら、災害対応の指揮系統の中には位置づけられていません。この記事では、災害時に議員はどう動くべきかについて、災害対策本部の指揮系統を乱さずに、議員にしかできない役割を果たす考え方を整理します。
災害対策本部にとって議員の動きが負担になる場面
私は多くの自治体で災害対策本部の運営に関わる研修を行ってきましたが、本部の職員から聞く率直な声の一つが、「議員からの個別の問い合わせや要望が、発災直後の最も忙しい時間帯に集中する」というものです。議員本人に悪意はなく、住民の声を届けようとしているのですが、本部長や各班の責任者が直接対応を求められると、全体の指揮に使うべき時間が削られます。
また、議員が避難所や被災現場に個別に入り、住民に「すぐ対応させる」と約束してしまうと、本部の優先順位と食い違い、現場の職員が板挟みになります。善意が指揮系統を乱してしまう。この構図を、まず議員の側が理解しておくことが出発点です。
議員にしかできない役割
では、議員は動かない方がよいのかというと、そうではありません。議員にしかできない役割があります。一つは、行政の情報が届きにくい住民への「伝達」です。高齢者、外国人、地域のつながりが薄い世帯に、避難情報や支援の内容を届ける役割は、日頃から地域を回っている議員だからこそ果たせます。
二つ目は、現場の実態を「まとめて」届けることです。個別の要望を一件ずつ本部に入れるのではなく、地域の状況を把握し、優先度をつけて整理した上で、決められた窓口に届ける。三つ目は、復旧・復興段階での政策的な役割です。発災直後は行政の指揮を尊重し、時間が経つほど議員としての本来の仕事が増えていく、という時間軸で考えてください。
情報の届け方:本部に直接ではなく窓口を通す
議員からの情報や要望を受ける窓口を、発災前に決めておくことが最も効果的です。多くの自治体では議会事務局がその役割を担う形が考えられます。議員は把握した情報を議会事務局に集約し、事務局が整理して本部に伝える。本部からの情報も、事務局を通じて全議員に同じ内容で共有する。この仕組みがあると、本部は指揮に集中でき、議員は同じ情報をもとに住民に説明できます。
私の経験では、この窓口の有無で、発災後の本部の負担は大きく変わります。「議員は本部に直接電話しない」というルールを、議員自身が申し合わせておくことが要です。
発災前に議会として決めておくこと
個々の議員の心がけに頼るのではなく、議会として仕組みを作っておくことをお勧めします。災害時の議員の行動指針、情報の集約窓口、議員の安否確認の方法、議会の開催や継続に関する取り決め、視察や現場入りの自粛期間の目安などです。こうした内容を議会の申し合わせや要綱の形で定めている議会も増えているとされています。
また、議員自身の備えも必要です。自分と家族の安全を確保できなければ、住民のために動くことはできません。地域の避難所の場所、避難行動の目安、連絡手段を、議員自身が確認しておいてください。
明日からできること
- 自分の自治体で、災害時に議員からの情報を受ける窓口が決まっているか確認する
- 担当地域の要配慮者や、情報が届きにくい世帯を把握しておく
- 議会として災害時の行動指針を持っているか、なければ提案する
研修の受講者からは「議員として何をしないかを決めることも大切だと分かった」という声をいただきます。動かないことも、住民を守る行動の一つです。
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