4月や10月の人事異動で市町村の防災担当になった職員の方から、「引き継ぎ書はもらったが、何から手をつければいいのか分からない」という相談をいただきます。防災担当は、着任した翌日に災害が起きても対応を求められる仕事です。この記事では、市町村の防災担当に異動した方が最初の1か月で確認しておくべきことを、引き継ぎで失われがちな知識を中心に整理します。
引き継ぎで失われるのは「紙に書かれていないこと」
私は多くの自治体で研修を行ってきましたが、防災担当の引き継ぎに共通する課題は、書類は残るが判断の根拠が残らないことです。「避難所はこの順番で開ける」とは書かれていても、「なぜその順番なのか」「前回の台風で何が起きて変えたのか」は前任者の頭の中にあります。前任者が庁内にいるうちに、書類の行間を聞いておくことが最初の仕事です。
とくに聞いておきたいのは、直近の災害対応で「困ったこと」と「うまくいった理由」です。避難情報の発令で迷った場面、住民から苦情が集中した点、消防や警察との連絡で詰まった箇所。これらは次の災害でも同じ形で起こります。
最初の1週間で確認する5つのこと
- 災害対策本部の設置基準と、自分が夜間・休日に呼び出される基準
- 避難情報を発令する判断の流れと、決裁者が不在のときの代理
- 指定避難所の鍵の場所と、開設を担当する職員の名簿
- 防災行政無線・緊急速報メール・SNSなど情報発信手段の操作方法
- 気象台、消防、警察、自衛隊の連絡担当者の名前と連絡先
この5つは、着任初日に災害が起きたときに必ず問われる項目です。操作方法については、マニュアルを読むだけでなく、実際に機器の前に立って一度触ってみてください。私の経験では、いざというときに操作でつまずく職員は少なくありません。
地域防災計画を読む順番
地域防災計画は分厚く、最初から読むと途中で挫折します。私が勧めている順番は、まず自分の市町村で最も起こりやすい災害の章、次に初動体制と災害対策本部の章、それから避難と要配慮者の章、最後にその他です。風水害が多い地域なら風水害編から、沿岸部なら津波編から入ると、自分の地域の現実と計画が結びつきやすくなります。
読みながら「この計画は実際に動くか」と疑ってみることも大切です。避難所の開設に必要な職員数が、夜間に集まれる人数と合っているか。要配慮者の名簿は最新か。計画と現実のずれを見つけることが、防災担当の仕事の中心になります。
顔の見える関係を先につくる
災害対応は、平時に顔を知っている相手とは電話一本で進みますが、初対面の相手とは進みません。着任後の早い段階で、消防本部の警防担当、警察署の警備担当、自衛隊の連絡担当、地方気象台、社会福祉協議会、自主防災組織の会長、地元の建設業協会などに挨拶に行ってください。「何かあったときは私が窓口です」と伝えておくだけで、発災時の連絡が変わります。
庁内も同じです。福祉、土木、水道、教育、広報の各部門で、災害時に動く担当者を把握しておきます。避難所は教育委員会、要配慮者は福祉、道路は土木、と担当が分かれているため、防災担当は庁内の「つなぎ役」になります。
自分の初動を決めておく
最後に、自分自身の初動を決めておいてください。夜間に大雨警報が出たとき、どの段階で登庁するのか。地震で揺れたとき、家族の安全を確認してから何分で庁舎に向かうのか。自宅から庁舎までの道が使えないとき、どの経路で向かうのか。防災担当自身が動けなければ、体制は立ち上がりません。受講者からは「自分の初動を考えたことがなかった」という声をよくいただきます。着任後の最初の1か月で、まず自分の動きを固めてください。
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日本防災教育訓練センターでは、市町村の防災担当職員向けに、初動対応と災害対策本部運営をテーマにした自治体向けの防災研修を行っています。講演・研修のご相談はお問い合わせフォームからお願いいたします。